Sentry は、毎日数十億件のイベントを取り込むソフトウェア監視プラットフォームであり、開発チームに本番環境の問題をデバッグするのに必要なコンテキストを提供します。同社の AI デバッグエージェントである Seer は、すでに Claude を活用して根本原因を正確に特定していました。しかし、問題点を開発者に知らせるだけでは不十分であり、Seer には修正まで対応させたいと考えていました。
そこで、Sentry は Claude Managed Agents を活用し、カスタムエージェントの実行基盤をゼロから構築することなく、バグ検出からマージ対応のプルリクエストの作成までを自動化する仕組みを構築しました。
Claude の導入により、Sentry は次のことを達成しました。
- Claude Managed Agents を搭載した、バグ検出からプルリクエスト作成までを行うエンドツーエンドの自動化
- 年間 100 万件以上の RCA(根本原因分析)を効率的に処理する能力
- 月間 60 万件以上のプルリクエストに対して、ほぼ即時のレビューを実施
- Managed Agents の初期導入を、1 人のエンジニアが数か月ではなく数週間で実現
- カスタムエージェントの基盤を維持するための継続的な運用負荷の解消
課題:課題の特定と修正の間にあるギャップ
Sentry は、すべてのエラーに対してスタックトレース、プロファイリングデータ、トレース接続、ログ、スパン、指標など、豊富なコンテキスト情報を提供しています。Seer のリリース当初、Claude を活用してそのテレメトリのすべてを分析し、根本原因を特定したうえで、修正案を提示していました。その結果、あらゆるレベルの開発者がより迅速に問題へ対応できるようになりました。
「開発者は、問題をデバッグする際に考慮すべき情報量の多さに圧倒されがちです」と Sentry の AI/ML 部門のエンジニアリングシニアディレクターである Indragie Karunaratne 氏は述べています。Seer は、ジュニア開発者が複雑な課題を理解するのを支援するとともに、シニアエンジニアに要点を簡潔にまとめて提示することで、彼らが調査ではなく検証に専門知識を活かせるようにしていました。
しかし、課題の特定結果や修正案が得られたとしても、開発者は依然としてコードベースに移り、実装を計画し、コードを記述し、プルリクエストを作成する必要がありました。原因特定から解決への引き継ぎの段階で、多くの時間と作業の勢いが失われていたのです。Sentry は、Seer の根本原因分析を、そのまま完成したプルリクエストへ自動的に変換する仕組みを実現したいと考えていました。
その機能の構築には、コーディングエージェントを実行する必要がありました。しかし、コーディングエージェントを実行するには、サンドボックス、ライフサイクル管理、エージェント実行基盤などを構築しなければなりません。デバッグに重点を置くチームにとって、これは本来の目標から大きく外れるものでした。
ソリューション:Sentry が Claude と Managed Agents を選択した理由
Sentry は、複数の AI モデルを評価した結果、Seer のためにすでに Claude を選択していました。非常に重要な要素の一つがセキュリティでした。Vertex AI を介して Claude を実行することで、Sentry は Google Cloud 外で共有されるデータを最小限に抑えることができました。「Vertex AI を介して Claude を利用することで、お客様のデータレジデンシーを維持できただけでなく、新しいサブプロセッサーを追加する必要もありませんでした」と Karunaratne 氏は述べています。
そして、Seer の機能を「課題の特定」から「自動修正」へと拡張する段階で、Claude Managed Agents は自然な選択肢となりました。Claude Managed Agents は、自社で構築していれば数か月もの開発期間を費やしていたであろう安全なエージェントの実行基盤、サンドボックス、ライフサイクル管理を提供しました。また、Sentry の顧客側からの要望もありました。多くの顧客がすでにローカルおよびクラウドベースの開発に Claude Code を使用しており、Sentry のデバッグ機能と Claude のコーディング能力をシームレスに連携させたいと考えていたのです。
Managed Agents を採用したことで、Sentry は汎用的なエージェント基盤の構築ではなく、自社製品を差別化する要素である「Seer の特定結果をコーディングエージェントへ引き継ぐ仕組み」に集中できるようになりました。
「Managed Agents のおかげで、初期導入を数か月ではなく数週間で実現できただけでなく、独自のエージェント基盤の維持に伴う継続的な運用上の負担も解消できました」
Managed Agents 上で実行される Seer から PR 作成までのワークフロー
Seer は、開発者をリアルタイムで支援すると同時に、バックグラウンドで修正効果の高いバグの根本原因の特定と修正提案を行っています。これらはいずれも同じ Managed Agents 基盤上で行われます。
問題が検知されると、まず Seer がソースコードとテレメトリクエリを行い、エラー、ログ、スパン、メトリクスなど Sentry の豊富な情報を基に、包括的な根本原因分析を実施します。診断が完了すると、その結果は Managed Agents 上で動作する Claude エージェントに引き渡されます。エージェントはソリューションを立案し、コード変更を実装したうえでプルリクエストを作成します。これにより、開発者の仕事は「修正コードを書くこと」から「修正内容をレビューすること」に変わります。
「開発者にコードのどこに問題があるかを伝えるだけでは不十分だと分かりました。彼らは修正までしてほしいのです」と Karunaratne 氏は言います。「現在では、お客様は Seer の根本原因分析から、そのまま修正コードを作成して PR を作成する Claude エージェントへと移行できるようになりました」
Managed Agents なしでは、Sentry は独自のサンドボックス機能やエージェント実行基盤をゼロから構築する必要がありました。しかし実際に初期統合をリリースしたのは、1 人のエンジニアでした。チームはコーディングエージェントそのものや、それを支える基盤を構築する必要はありませんでした。そのエネルギーを、最高のデバッグ体験の構築と、Seer の分析結果を Claude エージェントへスムーズに引き継ぐ仕組みの設計に費やすことができたのです。
「Claude Managed Agents を選んだのは、安全で完全管理されたエージェント実行基盤を利用できるため、それによって分析結果から修正作業への引き継ぎをシームレスにする開発者体験の構築に集中できるためです」と Karunaratne 氏は述べました。「Managed Agents のおかげで、初期導入を数か月ではなく数週間で実現できただけでなく、独自のエージェント基盤の維持に伴う継続的な運用上の負担も解消できました」
開発者にとって何が変わるのか
元々の Seer は、デバッグ作業を大幅に効率化するものでした。ジュニア開発者は、本来であれば広範なシステム知識を必要とする複雑な問題にも対応しやすくなりました。そしてシニアエンジニアは、何時間にも及ぶコンテキストレビューを省略し、Seer の分析結果の検証にすぐ取りかかれるようになりました。
「Seer は、マルチモーダルのテレメトリデータから関連性の高いパターンを迅速かつ正確に抽出する Claude の機能を活用しています」と Karunaratne 氏は説明します。「その結果、開発者はイベントを手作業で調べる代わりに、自身のドメインコンテキストを活かして分析結果を検証することに集中できます」
「Managed Agents との統合によって、その効果はさらに高まりました。開発者は単に診断結果や修正提案を受け取るだけではありません。レビュー、テスト、マージが可能なプルリクエストそのものを受け取れるようになったのです。ワークフローは、『Seer が問題点を教えてくれる』段階から、『Seer が問題点を特定し、それを解決するためのコードまで提案してくれる』段階へと進化しました」とKarunaratne 氏は付け加えます。
今後の展望
Sentry は、最も修正効果の高いバグの検出、診断、修正までを自動で行い、開発者はコードを書くのではなく提案された変更内容をレビューするだけで済むワークフローの実現に向けて、構築を行っています。Managed Agents がエージェント基盤を担うことで、チームは独自の実行基盤の維持・運用に時間を割くことなく、Seer が対応できる範囲を広げたり、自動デバッグの可能性をさらに押し広げたりすることに注力できます。
「現在では、お客様は Seer の根本原因分析から、そのまま修正コードを作成して PR を作成する Claude エージェントへと移行できるようになりました」

